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 目的の店は「ヘンリーアフリカ」から程近いところにある「寿司清」だ。満員なので少し待つことになった。この店は1階と地下1階に分かれている。たまにお互いの連携が悪くて一方は満員でも他方はガラガラということもあるので注意が必要である。ゼロは混んでいる理由をついいつもの癖で推理していた。
「ボーナスには早いしなぁ、ハナキンだからかな」
「おれのところは1日にボーナス出たよ」
 さすが不況知らずの塾講師。大山はボーナス説を力説した。実はこの日の前日に発売されたCAZが銀座特集だったのである。記事で「寿司清」が大きく取り上げられたことを知っていた伊東は2人とも違うと思っていた。

 しばらく待って3人はカウンターに座ることができた。ここは目の前で板さんに握ってもらうという本格的寿司屋スタイルの店だ。寿司屋に行くと緊張してしまうし、何を食べて良いのかわからないといったことがある。板さんによっても多少は違うが、この店は向こうから話しかけてくれる気さくな感じだ。またネタが新鮮で美味しいのはもちろんのこと注文のたびに伝票にチェックしていくので安心感があり値段も安い。混むわけだ。
「む~、うまい」
 ゼロは一発目、握ってもらったイワシとアジを食べながら恍惚の表情だ。
「これこれ」
 大山はまずは腹にたまるものからと言って握ってもらったエビの大きさに満足している。
「とろけるようだよ」
 伊東は注文と違って出されたホタテを頬張り、とろりとした肉厚のホタテを味わった。
 その後、ゼロが食べたアイナメがうまそうだったので伊東も握ってもらい食べた。伊東いわく、今日の絶品だったそうだ。その後、何度もアイナメを握ってもらっていた。伊東はうまいと思ったらそればかり食べるという性格なのである。トビウオも食べていた。

 最後は「ノリワン」だ。これは生の青海苔を味噌汁に入れただけというシンプルなもので、通常はその日の味噌汁の具が無くなったときに出されるものだ。ゼロと伊東が前にこの店に来たときに食べて2人とも衝撃を受けた。ゼロは初めての体験、伊東には実家の母の味だったのである。今日はそれをリクエストした。
「うまいよ、これ!」
 この日が初めての大山はお椀を鼻先まで持ってきたとき、まだ汁を飲んでもいないうちに、そう言った。青海苔の新鮮な磯の香りと味噌の懐かしい香りがあたりに漂っている。青海苔と一緒に味噌汁をすすると、とろりとした中にシャリシャリした歯ごたえを感じる。きざみネギだ。噛みしめるとネギの青い香りが鼻腔に広がる。青海苔はネギの香りに戦いを挑むかのようにその香りをぐんと高め、味噌の香りが両者の仲を優しく取り持つ。
 結局、大山と伊東は店を出る前にもう一度ノリワンをお代わりした。バカの三杯汁一歩手前だ。

横浜探偵物語番外編「銀座を食いつくせ」(最終話)につづく

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