iPhone、iPad向けの新しいOS「iOS 8」が先週発表された。秋にリリースされるこの新OSは、一般ユーザーにとって何がワクワクする点なのか。iOS 8の発表に歓喜してその日は一睡もできなかった、iPhone・iPadの熱狂的ファン&ライターの伊藤朝輝氏がiOS 8の「ワクワク」新機能を解説する。

今年のアップルの開発者向けイベント「Worldwide Developers Conference 2014」(WWDC 2014)の基調講演も、深夜2時からApple TVでライブで見た。自宅の居間にある普通のテレビが、ティム・クック(CEO)やクレイグ・フェデリギ(ソフトウェアエンジニアリング担当シニアバイスプレジデント)を映し出す状況なんて、数年前でさえも考えらなかった。パソコンの画面で見るよりも講演内容に集中でき、会場の興奮がより伝わってくる。

基調講演で発表された内容は、翌朝になれば、今やさまざまなメディアを通じて入手できる。深夜まで起きてライブで見る理由は、ライブでしか味わえない雰囲気に浸り、基調講演そのものを楽しむためと言える。

そういうわけで、基調講演を始終ワクワクしながら見ていたのだが、見終わったあともワクワクは続き、結局、一睡もしないまま朝を迎えた。いったいどこにワクワクしていたのか、今回はiOS 8の新機能/強化機能を中心に、ワクワクポイントを書いておきたい。

iOSやMac OS Xの開発を統括するクレイグ・フェデリギ。最近、アップルの発表会によく登場するようになった重要人物だ

1. カスタマイズマニア垂涎の「ウィジェット」がiOSに到来

基調講演の「Extensibility」(拡張性)というパートで、iOS 8の新機能がいくつかまとめて紹介された。

 今までiOSを機能拡張すると言えば、App Storeからサードパーティ製のアプリをインストールするぐらいしかなかったのだが、iOS 8ではサードパーティ製の「ウィジェット」と「キーボード」もインストールできるようになる。ワクワクポイント1は、この「サードパーティ製ウィジェット解禁」だ。

ウィジェットは通知センター上で、見やすく情報を表示してすばやく確認できる小型アプリ。iOS 7では日付や天気、カレンダー、リマインダー、株価などが表示できたが、アップル純正のものに限られていた。

だがiOS 8では、これがサードパーティに広く開放され、 追加するウィジェットに応じてさまざまな情報が表示できるようになる。通知センターに出す情報や表示位置をカスタマイズして、自分にぴったりの通知センターを作れるというわけだ。ホーム画面のどのページに、どのアプリを配置するか、フォルダにまとめるかといったことにこだわる人は、サードパーティ製ウィジェットの登場で、こだわりにますます拍車かかるのではないだろうか。

iOS 8の一連の新機能の1つ「Extensibility」(拡張性)。サードパーティ製の「ウィジェット」やキーボード入力プログラムを利用できるほか、アプリ間での機能共有や「ドキュメントの共有」も提供される
ウィジェットは通知センター上で動作し、簡単な操作はアプリ画面を表示しなくても実行できる。基調講演では、eBayの価格をチェックして入札するデモを見せていた

以前からウィジェットをサポートしてきたAndroidでは、アナログ表示の時計や、CPUやメモリの使用状況をグラフで表示するなどのウィジェットがある。これらはiOSにも登場するだろう。今や、App Storeの売上上位はすっかり資本力のあるメーカーが占めている状況だが、簡単な機能のウィジェットなら、個人プログラマーが活躍できる舞台になるかもしれない。

2. iPhoneでもついにATOKが使える(かもしれない)! パソコンIMとの連携でより快適に

前述のように、iOS 8では、文字入力部分をつかさどるキーボードが、ようやくサードパーティに開放される。2番目のワクワクポイントは「サードパーティ製キーボード解禁」だ(とはいえ、文字入力はプライバシーに密接に関わる部分なので、アップルによって厳しく審査されるに違いない) 。

基調講演では「Swype」と思われるキーボードがスライドに映っていた。Swypeは、オンスクリーンの英語キーボードから指を離さずに、入力したいキーを通るように一筆書きのように続けてなぞって文字を入力する方式。意図しないキーの上をなぞっても、意味が通る文章になるように文字が選ばれるという仕組みになっている。スペルチェックと自動訂正、文脈も判断して単語が組み立てられる。

このような仕組みとかな漢字変換を伴う日本語入力システム(IM:インプットメソッド)は同じものなので、「ATOK」や「Google日本語入力」、手書き入力の「mazec」などが、iPhoneやiPad上で使えるようになると信じたい。

現在、Macでは、標準IMである「ことえり」と、iPhone、iPadの標準IMのユーザー辞書は、iCloudで連携している。同じApple IDでiCloudを使っているすべてのデバイスで、常にユーザー辞書が同じ状態になっているので、どのデバイスで単語を登録したかを気にする必要がない。ところがパソコン側で「ことえり」以外のIMを使っているユーザーにとっては、せっかくの連係機能が使えなかった。

だがiOS 8で、ATOKやGoogle日本語変換などのIMがiOSデバイス側で利用でき、ユーザー辞書をiCloudなどで同期できるようになれば、パソコン側のIMとの連携の自由度が増し、今以上に快適に文章を作成できるはずだ。

iOS 8では、サードパーティ製キーボードもインストールできるようになる。基調講演で紹介されていたキーボードは、Swypeだと思われる。サードパーティ製の日本語入力システムも利用できるようになる可能性も高い

3. 「Handoff」を使えば作業を他のデバイスで続けられる

個人的には「Handoff(ハンドオフ)」という新機能が一番のワクワクポイントだ。これは複数のiOSデバイス、またはiOSデバイスとMacを利用している人が対象になる。iPhoneしか持ってないという人には関係のない話になってしまうが、Handoffの使い勝手を知ると「iPad、買おうかな」とか「次にパソコンを買うならMacにしよう」と思うかもしれない。

Handoffは、アップルが「Continuity」(継続性)と呼ぶ一連技術の1つ。同じApple IDでiCloudを利用しているデバイス同士で、メールやSafari、メッセージなどの標準アプリ、Pages(ワープロ)、Numbers(表計算)、Keynote(プレゼンテーション)などのアップル純正アプリ同士が、自然な流れで作業を継続できる。

これを初めに聞いたとき「今のiOSでも書きかけのメールは「下書き」に入って、iCloudで同期されているから、他のデバイスでも「下書き」を開けばシームレスに続きができるけど……」と思った。Pagesなどもそう。iCloud経由でリアルタイムに同期して、編集内容が反映される。だから、作業を続けたいデバイスでアプリを開けば続きができる。ところが、基調講演のデモを見ると想像とは全然違っていた。

例えば、メールを書きかけの状態で、iPhoneをMacのそばに持って行くと、MacのDockのもっとも左側に「メール」アイコンが現れてジャンプアップする。このアイコンをクリックするだけで、Macでメールが起動して続きが書けるようになる(Mac側は、秋リリース予定のMac OS X Yosemiteの機能)。iPadのそばに持って行くと、iPadの左隅に同じようにアイコンが表示され、タップで続きができる。

つまり作業の続きをするために、その作業をしていたアプリがなんだったかということさえ気にしなくてもいいということになる。これに比べると、今までの「シームレス」は、全然シームレスじゃなかった!

iPhoneやiPadなどのiOSデバイス、およびMac間で、これまで以上に作業をシームレスに継続できる仕組みなどを提供するのがHandoff。iPhoneにかかってきた電話を、iPadやMacで受ける機能も、これに含まれる
メールを書きかけの状態で、iPhoneをMacのそばに持っていくと、MacにiPhoneでメールを書きかけていることを示すアイコンがDockでポップアップする。クリックするとMacでメールの続きを書ける

4. 「Health」アプリでヘルスケア情報を一元管理できる!

4番目のワクワクポイントは、ヘルスケア情報の統合管理環境についてだ。 

iPhone、iPadで利用できるさまざまなヘルスケア製品が扱う、体重、体脂肪率、歩数、心拍、カロリー消費量、血糖値、コレステロール値といったデータは、これまで各製品、各アプリごとに別々に管理されていた。だが、iOS 8で標準搭載される「Health」アプリは、これらを一元管理できる。各データをアプリから扱うための「HealthKit」もアップルから提供された。HealthKitを利用することで、アプリやメーカーの垣根を超えてデータが利用できるようになる。

例えば、今使っているリストバンド型のウェアラブル活動量計を、他社の製品に乗り換えたとしても過去のデータを継続して利用できたり、記録されたデータを他のアプリから参照することで別の使い道や可能性が生まれる。かなり以前から、アップルが「iWatch」なる腕時計型のデバイスを発表するのではないかと噂されているが、その下地を整えてきたとも見える。これもワクワクのポイントだ。

ヘルスケア情報を統合管理するアプリのHealthが標準搭載される
メーカーの異なるウエアラブルデバイスで計測されたデータも、HealthアプリとHealthKitを中心に標準化されることになり、互いに利用できるようになる

5. 「Family Sharing」は、スマホを家族で利用する正しい形だ

現在、子供がスマートフォンやタブレットなどを利用する場合、子供がネット上で危険な目にあったり課金しすぎたりしないよう、保護者が正しく管理して見守っていく必要がある。iOSデバイスやMacは、前から使いやすい「ペアレンタルコントロール」の仕組みが導入されており、以前からこの分野ではもっとも先進的と言ってもよかった。

今回発表された一連技術の「Family Sharing(ファミリーシェアイング)」にはこの機能がさらに進化、コンテンツの決済についても家族間でコントロールできる機能が含まれている。最大6人の家族を登録して、App Storeをはじめとするアップルのコンテンツ販売サイトで、1枚のクレジットカードを登録した家族全員で利用できる。そして子供がコンテンツを購入しようとした場合に、保護者の許可を得なければならないようにもできる。

今までは、保護者と子供のiOSデバイスに同じApple IDを設定してコンテンツを購入していた人もいるかもしれない。子供はパスワードを知らなければ、コンテンツが購入できないわけだが、Apple IDを共有している時点で理想的な使い方とは言えない。子供が新しいApple IDを取得して独立すると、それまでのコンテンツが利用できないことにもなる。「Family Sharing」は、家族内で子供がiOSデバイスを利用する際の理想的な形を提供してくれると思う。

Family Sharingは、家族で1枚のクレジットカードを利用する仕組みや、家族のiOSデバイスの所在地を確認できるなど、家族間でiOSデバイスを利用する際に便利な機能を提供する
子供がApp Storeなどでコンテンツを購入しようとしたときに、保護者に許可をとった上で購入できる仕組み。将来、子供が保護者の管理下から独立する際にもスムーズになる

6. どよめきで会場が沸いた!新プログラミング言語「Swift」

最後に「Swift」をワクワクポイントの6番目として挙げておきたい。基調講演でSwiftが発表されたとき、これまでの拍手喝采に加えて「おおー!」というどよめきが起こった。

これまでiOSアプリやMac用のアプリケーションを開発するには、「Xcode」という開発環境で、「Objective-C」というプログラミング言語でコーディングしていた。Swiftは、Xcodeで利用できる新しいプログラミング言語になる。会場のどよめきは、Swiftに可能性を感じたからに違いない。

基調講演では、Objective-Cよりもコーディング量が少なくて済み、コード自体も読みやすいと紹介していた。基調講演会場のどよめきと歓迎ムードを見ているだけで「自分もアプリを開発したい!」と思った人はいるのではないだろうか?

iOSアプリやMacのアプリケーションを開発するための、新しいプログラミング言語Swiftが登場した。これまで利用されてきたObjective-Cとの共存も可能
Swiftはコーディングだけではなく、デバッグも容易。記述したコードがどんな動作をするか、変数がどんな値を取るかなどをその場で確認する機能がある

iPhone 4S以降の端末でiOS 8を使える

これまでワクワクすべき新機能を6つ挙げてきた。ほかにもたくさんの新機能が発表されたので、泣く泣く外した機能も多い。おそらくこれから本リリースの秋までのうちに、基調講演で公開されなかった新機能も次々明らかになってくるはず。

そういうわけで、ワクワクポイント6+1の「+1」として、昨日まで使っていたiPhoneやiPadが、「iOS 8にアップデートしただけなのに、新しい機種を買ったときみたいに新機能が使える」点ををワクワクポイントにあげておく。おそらく、iPhoneやiPadユーザーにとっては、今までも今後もこれが最大のワクワクポイントになるだろう。だからこそ使えば使うほど好きになって、ずっと使い続けたいと思うのだ。

ちなみに、iOS 8はiPhone 4SやiPad 2以降の端末でサポートされる。ただし古い機種ほど、動作が緩慢になったり一部の機能が制限される場合もあるので、iOS 8にアップデートするかしないかは、慎重に考えよう。リリースされる秋までは、まだ時間はある。

文/伊藤朝輝(日経トレンディネット2014.June.10公開)

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