前回のあらすじ
 買い物のために土曜日の横浜に出かけたおれは、ビブレ21にあるココ山岡のお姉さんにダイヤの指輪を見せられ無駄使いチェックをされた。さらに「女の子好き?」という意味深な質問を受け、少しずつ奇妙な世界へ引きずり込まれていた。

「カレさぁ、彼女いるかなぁ?」
「真剣につき合っている人はいないよ」
 その頃になるとお姉さんにつられて、タメぐちになっていた。
「でも、結婚はするよね。いつ頃、結婚したい?」
「30前にはしようかな」
 今、考えると恥ずかしいぐらいマジに答えた。
「そしたらさぁ、あと6年だよね。今、結婚費用っていくらぐらいかかるか知ってる?」
 おれは、はっとした。結婚したいといっておきながら、それにいくらぐらいかかるのか全く知らないのだ。なんとなく恥ずかしくなった。
「今はねぇ、だいたい500万から700万はかかっているの」
 いくらバブルの時代だったからといってもこれはちょっと多いのではないか。その数年後に結婚したときはだいたい400万円ぐらいが平均で、おれなどはそれよりもずいぶんと安くあげてしまったのだ。しかし当時のおれには全く相場がわからなかった。お姉さんは続けた。
「式で1日に300万から500万も使っちゃうのよ。その他に結納ってのを男が彼女のお父さんとお母さんにあげるんだけど、これがだいたい100万円ぐらいかかるんだよね」
 お姉さんはココ山岡のネーム入り便せんに万年筆で図を書いて説明してくれた。お姉さんがいうには、彼女をただでお嫁さんにくださいとは言えないわけで、彼女を育ててくれた感謝の気持ちを込めて結納を送るということなのだ。おれはそれまで結納というものを全く知らなかった。
「だけどねぇ、最近はこれが無くなってきているの」
 そう言いながら、結納100万と書いた字に万年筆で上から×印を書いた。
「両親にしてみれば、娘がお金で買われるようで嫌なわけ。だから結納金をもらったとしても、娘がお嫁に行くときに持たせちゃうの。それだったら、いっそのこと無しにしましょうってことになるのよ」
 ふうん。おれは結納が無くなるのが良いことなのか悪いことなのかを考えていた。

 しばらくそのような話をしているところに奥の方からもうひとりのお姉さんがやってきた。明らかに今までのお姉さんよりも少し歳をとっていた。お姉さんというより「お姉さん」とカッコ付きで書きたい感じだ。その時までショーケースをはさんで話していた若い方のお姉さんは、ショーケースをくるりと回って、おれの横に立った。少し寄り添うような感じだったので、おれはちょっと嬉しいと思うと同時に、これだけで嬉しくなってしまう自分が悲しかった。

ココ山岡とダイヤモンドとおれ(その4)につづく

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