Quickca Fight Jul 18, 1997
スリムでかっちょいいPalmPilotを使う-->クイックちゃん登場

日までの出張疲れと既に来週、再来週の延岡出張が延長されたショックで早めに退社した。まるで「再逮捕」な感じだ。ま、この3連休にがんばるからその前の息抜きと思ってもらえないだろうか。
 田町駅で内周りの山手線を待っていたら、女子大生ふうの女の子が近づいてきた。やけになれなれしい笑顔だ。
「あたし」
「あ、なーんだ、クイックちゃんか」
 コスプレしていないクイックちゃんを見るのは初めてだったので全然わからなかった。実はおれもクイックちゃんの素性はあまり知らないのだ。知っているのは両親は日本にいなくて、おじいさんの家に住んでいるらしいということだけだ。
「ずいぶん、疲れてる感じだね」
「まぁね」
 おれは作り笑顔をして見せた。

「今日はどうしたの? おれ、まだピンチってわけじゃないけど」
 クイッカマンはピンチのときに何度かクイックちゃんに助けられていた。クイックちゃんは本当に変身できるわけでもなく特殊能力があるわけでもないのにだ。彼女のクイッカスーツは単なるコスプレなのである。
「これを持ってきたの。おじいさんがクイッカマンに渡してくれって」
 そう言うと彼女は手帳のようなものをおれに差し出した。
「これはUSRobotics社のPalmPilot Professional!」
 PalmPilotはCasioのWIZを一回り大きくしたぐらいのいわゆるPDAである。Newton MessagePad120の画期的なユーザインターフェースには刃が立たないが、わずか160gという重さ、快適な動作環境、すばらしいOSがウリだ。ユーザの努力で日本語化されている。写真の真ん中がPalmPilotだ。その下が専用のモデム。本体にカチッと接続して使う。PHSをつないでE-Mailも送受信できる。驚くことにNewtonKeyboadを接続して日本語を入力することも可能なのだ。興味があれば山田達司氏のホームページから始めるといい。

 手に取ってみる。手に心地よい重さだ。裏をよく見ると「PalmPilot QuickcaProfessional」と書かれている。
「これからはニュートンの代わりにそれを使うように、だって」
 確かにNewtonMPのインターフェースは画期的だが、現在日本語化することでその機能を半分以上殺してしまっている。そのくせNewtonMPは460gもあり、サイズはLibrettoをふた回りほど小さくしたぐらいなのだ。使っている機能のことをいえばPalmPilotでも十分だ。それに以前からおれのクイッカ感覚が「オモシロイ」と感じていたのである。

 あれ? でも、なんでクイックちゃんのおじいさんがコレをおれにくれるんだ?
「わたしも不思議なんだけど、うちのおじいちゃんはクイッカマンのことを知ってるみたいだったよ」
 クイックちゃんのおじいさんが、祖父マップ? クイックちゃんから一度、どこかの大学教授だと聞いたはずだが…。

 おれは早速QuickcaPalmPilotの機能を試してみることにした。これに書くことによっておれのクイッカ感覚で想像したものを現実のものにしてくれるのだ。おれは「Memo Pad」起動して慣れないGraffitiの書き順で文字を入力していった。『クイック…』そのとき。
「クイッカマン、誕生日おめでとう!」
 そう言うとクイックちゃんは下からおれの顔をのぞき込んで左の頬にチューをした。クイックちゃんはそのままホームの階段へと消えていった。おれはびっくりして彼女の後ろ姿を見ていたが、再びQuickcaPalmPilotに眼を落とし書きかけの文章を完成させた。『…ちゃんがおれに誕生日のプレゼントをくれる』
 今のはPalmPilotの力か、それとも…。