Quickca Fight Jul 10, 1998
初めての送別会-->ボンレス奇怪人ハムゥーン登場

 今日は6月までいた部の歓送迎会。おれは初めて送られる側になった。体調が悪いのと、おれの夢をかけた大仕事のために、今日は悪いと思いつつ二次会に出ず帰ってきた。
 8時ちょっと過ぎ、田町から東京方面行きの山手線に乗った。入り口のドアのから入って対面する座席に、下着のような格好をしたムチムチの女子高生が二人座っていた。細い肩ヒモが肉に食い込み、ボンレスハムのタコ糸のようだ。
 若さというベールに惑わされて、彼女たちをエッチな目で見てしまいがちだが、おれは冷静になることができた。32才を目前に控え、かなりの余裕でてきた自分を誇らしく思った。彼女たちのパンツが見えたからといって、うれしく思ってはいけないのである。

 電車が東京駅に着いた。おれが電車を降りた後、彼女たちも降りてきたようだった。おれがホームの階段を下りようとしていたときに、そのうちの一人がよそ見をしながら、おれの方に近づいてきた。彼女は体を少しひねった時に、おれが肩にかけていたかばんに指先をかすった。
「いてーなー!」
 これは、彼女のセリフである。普通の人なら聞き逃してしまう言葉であるが、おれのクイッカイヤーは的確にとらえた。クイッカパワー、スイッチオン!
「キサマ、ボンレス奇怪人ハムゥーンだな。チェーンジ、クイッカマン。セット、アップ!」
 おれの体はクイッカパワードスーツに包まれた。かなり暑い。ムレムレだ。
「そっちが、よそ見してぶつかってきたんだろが」
 甘やかしちゃいけない。大人は怖いものなのだ。
「てめーが、そこにつっ立ってンのが悪りーんだよっ!」
 女の子はすでに、脇乳が不気味にはみ出した醜悪な化粧の奇怪人に変身していた。こんなやつに「くされま○こ」というようなことを言っても、ちっとも応えない。第一、その通りである可能性が高い。
「わかった、おれが悪かったよ。これで許してくれ」
 おれは財布から千円札を出した。これに対する反応は、受け取る、受け取らないの2パターン考えられるが、とる行動は一緒でいい。
「いらねーよ、そんなもん」
 とりわけ太ったほうのやつが言った。おれは千円札を細かく破って、彼女の足下にまいた。
「じゃ」
 あっけにとられている彼女たちの横を擦り抜け、階段を下りた。