Quickca Fight Apr 15, 1997
眼鏡を新調した-->歩行喫煙奇怪人スモークレディ登場

しい眼鏡を作った。コンタクトレンズもいいなと思っていて、今度は「1 Dayアキュビュー」ってやつにしてみようと思っているんだが、眼鏡屋の前を通ると眼鏡が欲しくなっちゃうんだ、なぜか。
 フレームを選んで検眼したのは11日の土曜日で、できあがりは昨日。月曜日だ。昨日は仕事で遅くまで会社にいたので取りには行けなかった。眼鏡はできあがった後、実際にかけてみてフレームを微調整する。これが大事だ。これがいい加減だと鼻の付け根や耳が痛くなって1時間とかけていられない。だから本人が眼鏡屋に取りに行くのがベストなのだ。

 そういうわけで今日は6時半に会社を出た。この時間に帰るのは久しぶりだ。うれしいが会社の帰りまでラッシュってのはアレだな。だらだら歩いている新入社員の集団をかき分けて、会社から駅へ向かう途中、前方からたばこの煙だ。歩きながらたばこを吸うとは最低限のマナーも守れないやつめ。灰をどこへ落とすつもりだ。吸い殻はどこへ捨てるんだ。それ以前になんでこんなところで煙い思いをさせられないといけないんだ?
 おれは体内のクイッカパワーを体の中心部に集中させ変身の準備を整えた。その瞬間、歩きたばこの犯人が目の前に現れた。なんと女だ。
「お、女なのに歩きながらたばこを吸うのか!」
「ふふふ、クイッカマンね」
「やはり奇怪人か」
 久しぶりに来た。おれは人気のない森永ビルの前におびき寄せた。
「チェーンジ、クイッカマン。セットアップ」
 もう少し遅い時間ならここは人通りが減るのだが、この時間はまだ人が通る。おれは物陰で変身した。
「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ。悪を倒せとおれを呼ぶ。おれは正義のヒーロー、クイッカマン!」
 仮面ライダーストロンガーのパクリで名乗った。
「ふふふふふふ、私はスモークレディ。NEO-SEA-HORSEから追放された奇怪人よ。あなたはさっき、"女なのに歩きながらたばこを吸うのか"って言ったわね。そんなの女性差別よ!」
 うむむ。この手の攻撃には弱い。女性と口論して勝ったためしがないのだ。中学の頃の友人で、女のクラスメイト2人を、掃除をさぼってはいけないといった説教で泣かしてしまったやつがいた。すごい能力だと思った。

「スモークレディ、女性差別に聞こえたなら申し訳ない。そういうつもりはないが、一応言い訳をさせてくれ。歩きながらたばこを吸うのは男だろうが女だろうが絶対いけないことだ。おれが驚いたのは、女性は男性ほど愚かではないと思っていたからなのだ。ま、喫茶店とかに入ればみんな当然のようにたばこを吸っているから、もうダメなんだろうな」
 スモークレディにおれの気持ちをわかって欲しかったので、マジに説明をした。ところがだ。
「私が何しようが勝手でしょ〜。みんなやってるじゃん。コーヒースモーク!」
 が〜ん、やっぱりもうダメだ。スモークレディはコーヒー飲みながらタバコを吸ってしばらくたったときの、他に例えようのないくさい息を吹きかけてきた。
「うぉおおお。くちゃい。そっちがその気ならこっちはこの気だ。新兵器、クイッカ毛穴すっきりパーァック!」
 スモークレディの鼻にクイッカ毛穴すっきりパックを貼り付けた。
「ああ、やめて〜ぇ。仕事帰りでぼろぼろなのぉ」
 そう言いながらもスモークレディは、内心の期待を押さえられないらしく、しっかり10分待った。

「クイッカ毛穴すっきりパックはがしっ!」
 おれは取れた脂肪が形よく見えるようにそっとパックをはがして、スモークレディに見せた。
「うわぁ、こんなにすごいの初めて見た〜。ねぇ、見て見て、クイッカマン!」
「嬉しい気持ちはおれにも何となくわかるが、それって人に見せるほどきれいなもんじゃないぞ」
 スモークレディの動きが止まった。ちゅどーん! スモークレディの姿は跡形もなく消え、あとには毛穴すっきりパックだけが残った。

 おれはさっさと変身を解き、田町駅に向かった。今日中に眼鏡を受け取ることができるか少し心配だった。