Quickca Fight Jan 17, 1997
39度の闘い-->香港A型奇怪人ザ・インフル登場

、目が覚めたら頭が重い。風邪だ。昨日の特訓、クイッカマン変身ポーズ連続500回で汗をかいたまま、体が冷たくなるまでしばらく起きていたせいだ。すぐに風呂に入って寝れば良かったのだ。
 後悔先に立たず。おれは会社に電話した。
「すみません、今日は午後から会社に出ます。コンコン」
 もう少し寝てればなんとかなると思ったのだ。いや、なんとかなって欲しい。来週の火曜日にまた九州の魔境延岡に出張して、イントラネット画面をデモしなけらばならない。そのデモ画面を作らなきゃならないのだ。午後出かけて作ろう。おれは目覚まし時計を11時にセットし直して眠りに落ちた。

 ピピピピピピピピピピ。目覚まし時計が鳴った。時間は…、10時。おかしい、11時にセットしたはずなのに。体もまだだるい。
 その時、おれのクイッカセンサーが奇怪人の存在を感じた。熱で鈍くなっているが確かにいる。近くだ。
「くっくっくっく、いいざまだな。クイッカマン」
「誰だ?」
 おれは布団から飛び起き、いや飛び起きれないので這い出して、辺りを見回した。
「ここだ」
 ベランダの外を見ると鳩が一羽、こっちを見ている。
「くっくるぅ。まんまと作戦に引っかかったようだな。おれは香港A型奇怪人ザ・インフルだ。お前は昨日、電車で老人に席を譲っただろう。あれはおれだ。」
 くそぅ。そう言えば昨日、電車にゴホゴホと咳をして具合が悪そうなお年寄りがいたので、席を譲ってあげたのだ。あのときに風邪菌をうつされたのか。
「人の親切につけ込むヤツは許せん。チェーンジ、クイッカ……、うううう」
 全身の節々が悲鳴を上げる。熱のせいで体の自由が利かないのだ。おれはなんとか変身ポーズを完成させた。しかし変身しない。クイッカパワーが足りないのだ。こうなったらこのままで戦ってやる。どうせ相手は鳩だ。
「くっくっく、くるっくぅ。そんな体でおれと戦うつもりか。やめておけ。今日は様子を見に来ただけだ。大事にしろよ」
 バサバサバサ。鳩はベランダから飛び去った。
 ちくしょう、完敗だ。気持ちが落ちついてくると体のだるさが一段と増していることに気が付いた。立っていられない。おれは布団に倒れ込み、遠のく意識の中で午後も会社を休むことを連絡しなればいけないと思っていた。