Quickca Fight Jan 7, 1997
自動改札による入場記録がありません-->改札奇怪人エキインブレイ登場

もしもし、お客さん。困りますねぇ」
 会社の帰り、自宅最寄り駅の改札を抜けたときに、駅員がおれに声をかけてきた。自動改札に「自動改札による入場記録がされていません」と表示されたのだ。この表示が出るようになって、約半年。ま、いつかこうなることは予想していた。おれは駅員の入る窓口にの方へ回った。
「定期を見せてぇ。どこから乗りましたかぁ?」
 人を罪人と決めつけている目だ。
「田町から乗りました」
 そう言って定期券と田町から乗ったことを証明する150円の切符を見せた。なぜ120円じゃないかって? あたりまえじゃん。120円で乗ったらキセルだよ。田町から150円でおれの定期にちゃんとつながるのだ。キセルじゃない。

「田町から150円で八丁堀。そんで定期でここ」
 駅員はビニールのカード入れに入った路線図と料金表、おれの定期と切符をきキョロキョロ見比べた。
「なんだ。ちゃんと精算機で清算してよ」
 なにぃ。清算して来いだと。駅に1つしかない精算機は帰りのラッシュ時には長蛇の列だ。これが間違っているのがわからないのか。そんなことは精算機の数を揃えてから言え。不足分を支払うならまだしもおれの切符と定期を清算すると0円の清算券が出てくるのだ。そんなもの先に駅員が見て通せばいいじゃないか。おれひとりでも列に並ばなければ、みんな早くうちに帰れるじゃないか。
「今、あなたが確認してくれたじゃないですか。通してください」
 おれは混雑していないときはちゃんと清算していること、精算機の数が足りないこと伝え、このような場合は改札機に切符と定期を同時に入れたら通れるような改札機を作るといいという提案をした。
「ダメだ、クイッカマン。ちゃんと清算をしてこい」
 うぉ、なぜわかったんだ。瞬間、おれは電車を降りて家まで歩くときに寒いと思って、手袋部分だけクイッカマンに変身していたことに気が付いた。げ、うかつだった。
「この駅はおれたちNeo Sea Horseが乗っ取った。おれは改札奇怪人エキインブレイだ。」
 そう言って、エキインブレイは駅員室の向かい側にあるキオスクに目配せした。キオスクではNeo Sea Horseの戦闘員が賢明に客を裁いていた。これもNeo Sea Horseの活動資金集めなんだろう。
「チェーンジ、クイッカマン。セットアァップ!」
「硬券アタァァァック」
 クイッカスーツが定着するかしない0.01秒の間に、エキインブレイの差し出した腕からは今や珍しい堅い切符が手裏剣のように飛び出してきた。ヤツはおれに「名乗り」をやらせてくれない気らしい。気の短いヤツめ。そっちがその気なら、こっちはこの気だ。
「クイッカCCDフラーッシュ! クリスマスライッツッ!」
 エキインブレイの周りを赤、緑、青の細かな光が取り巻いた。一瞬、目のくらんだところにQuickCamのレンズ部から発する太いレーザー光線がエキインブレイの胴体を貫く。Color QuickCamのクリスマスライツ現象はCCDの特性上どうしても発生してしまうものだ。バグではないマニュアルにも明記されている。これをクイッカCCDフラッシュに応用したものが、クイッカCCDフラッシュクリスマスライツだ。ちなみにQuickCam 2.1a COLOR updaterを適用することにより多少はよくなる。Connectixのサイトで手に入る。
「ぐぉぉぉぉ、早過ぎるぅぅ」
 やつは大爆発を起こした。キオスクで働いていた戦闘員は、取りあえずその日の売上を持って逃げていった。
 辺りには人だかりができていた。
「この駅はまだ見逃してくれているようだが、八丁堀の駅では試験的に取り締まって入るみたいだからキセルはやめような」
 と、おれはカメラ目線で言った。